London2012 Day2 ~日本対ポーランド戦レビュー~

パラリンピック男子予選プールB,日本の2試合目の相手はポーランドです.ポーランドは2011年に行われたロンドンパラ・ヨーロッパ地区予選を4位で通過した強豪です.トルコ・ガラタサライに所属する2枚看板の#5・Filipskiと#11・Lusynskiを擁するオフェンス力の高いチームです.LusynskiはチームのHCも兼ねている39歳の選手.試合に出ながらもタイムアウトで的確な指示を飛ばす様子が何度も画面で紹介されていました.#5・Filipskiはヨーロッパ選手権で一試合20.75点をたたき出した世界でも有数のシューターです.

第1Q
日本のスターティングラインナップはカナダ戦に続き藤本・香西・白丸・藤井・東海林.ティップオフは日本のボール,ファーストシュートの香西のミドルシュートが決まって日本が先制.日本はオールコートプレスでポーランドのオフェンスリズムを崩す作戦.対してポーランドは#11から#5へのロングパスでブレークしてきます.
 序盤はポーランド#5・Filipskiのワンマン速攻,日本は香西からのアシストを受けた藤井のレイアップなどで,互いに点を取り合う展開.しかし,#11Luszynskiの3ポイントでポーランドが6-9とリードを奪うと,トランジションからの速攻でじりじりと点差を広げていきました.日本も良い形で攻められてはいるものの,フィニッシュが安定しないことで藤本のフラストレーションがたまっていく様子が見て取れます.日本は藤井・白丸を下げ,豊島・増渕を投入して事態の打開を図ります.増渕のミドルシュートなどで追い上げますが,やはり#11Luszynskiのシュート力は半端ない!ディフェンスプレッシャーをものともしないミドルシュートが決まり,21-10で第1Q終了.
ここまでポーランドは8/16,実に50%というハイアベレージ.対する日本は5/17で29.4%にとどまっていました.

第2Q
日本はさらに#5・Filipski,#11・Lusynskiへのプレッシャーを強めるも,そこから供給されたパスを他のプレーヤーが確実に沈め,じりじりと点差が開いていきます.約4分間ノースコアが続き,ポーランドの速攻から#5がシュートを決めたところで日本前半二回目のタイムアウト.「ここで乱れるな!ここで乱れるな!」と語りかける香西に,藤本が「OK」と答えます.
このタイムアウトで東海林・香西に代えて鈴木・佐藤がイン.増渕のアウトサイドシュート,カットインに活路を見出そうとした藤本のインサイドショットで日本も追いすがりますが,ポーランド・#5の速攻をどうしても止めることができません.オフサイドからトップ付近に上がって藤本がシュートを打った瞬間にポーランドの選手が走り出しています.
残り3分で日本はついに藤本をベンチに下げます.日本は前半終了間際に鈴木がてぃるティングシュートをねじ込み,20-43で折り返す.
ポーランドは前半のFG% が18/32で52.9%,日本は10/30で33.3%と20%近いシュート率の差がついてしまいました.トータルリバウンドはポーランドの23に対して日本は12と,ポーランドのシュート確率がよいためリバウンド数が減ってしまうのは仕方がないところ.日本はカウントの後のオールコートプレスにいくのですが,#5,#11をマークしているディフェンスをピックアウトされたところからディフェンスのトラブルが起こる場面が何度か見られました.ポーランドはベースラインからのジャンプをうまく使って,ダイブ裏のシューターにプレッシャーをかけ,日本のオフェンスリズムを微妙にずらしていくことに成功しているようです.

第3Q 
日本のラインナップは藤井・香西・藤本・鈴木・佐藤.立ち上がり,香西の3ポイントシュートが決まり23-45.藤本のシュートは依然タッチが合ってこない苦しい時間が続きますが,残り5分,ミドルシュートをきれいに沈め,ここからシュートが当たり始めます.さらに増渕の連続バスケットカウントが決まり36-56となったところでポーランドのタイムアウト.日本はここで宮島・佐藤に代えて中澤と京谷がイン.京谷のベテランの力でリズムを取り戻そうと試みます.第3Q終了間際,藤本はフリースローを2本とも沈め,39-64で終了.このクォーターは19-21と善戦しました.

第4Q 
メンバーを東海林・藤井・白丸・藤本・香西に戻してスタート.ポーランドは#5もベンチへ下がっている.残り8分,オープンになった白丸が香西からのアシストを受けてシュートイン!41-64.
残5分43秒日本は香西・宮島・藤本・東海林・京谷のラインナップをコートへ.AOZ予選の決勝を思い出します.香西がボールサイドの起点を作り,藤本へのラストパス!さらには宮島のインサイドカットインが決まって47-66!宮島の得意とするインサイドへの動きが,また別の攻撃ポイントを生み,アウトサイドの空いたスペースで藤本のシュートなど,攻撃のテンポが良くなったのが見受けられました.

最終スコアは53-78.ポーランドのチームFG%は55%,対する日本は38%と,ポーランドのシュート率の高さが目立った試合でしたが,ポーランドのシュート力は織り込み済みだったわけですので,特にびっくりすることではありません.ただし,日本が考えるべきことは,相手のシュート率をいかにしてあと9%下げ,自分たちのシュート率を9%上げるか,ということです.
今日の試合で印象深かったのは,ポーランドのLusynskiの強いリーダーシップです.選手兼HCということでいやでもリーダーにならざるを得ないわけですが,やはり自ら試合を読み,自から流れを作りだし,自らチームの士気を高めていくその様は,世界トップレベルの選手であるということを見せつけました.一方で,試合を見ながら取ったメモを見て気づいたのですが, 日本は非常に交代が多くなっています.チームのキャプテンである藤井選手がベンチに下がった時,あるいはゲームメークの中心である香西選手が抜けたとき,そういう時間帯に誰がリーダーシップを取るのか.というところにも注目して,今後のゲームを見ていきたいと思います.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

Jキャンプスタッフ、広報担当 2007年からNO EXCUSEを撮影し始め、車椅子バスケットボールに関わり始める。 Jキャンプ2008に撮影ボランティアで参加し、その後スタッフになり、 チャンスがあれば海外大会への観戦・取材にも飛んでいく。 【2008年・中国】北京パラリンピック 【2010年・中国】広州アジアパラ競技大会 【2011年・韓国】ロンドンパラリンピックアジア・オセアニア地区予選 【2012年・イギリス】ロンドンパラリンピック 【2013年・アメリカ】全米大学車椅子バスケットボール選手権大会